東野圭吾

東野圭吾

ひがしのけいご

大阪市生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。『放課後』で江戸川乱歩賞。『秘密』で日本推理作家協会賞。『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞。

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感想一覧

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手紙

東野圭吾 著 / 文春文庫 / 3.5 / *

あらすじ

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く...。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。

「手紙」の感想

犯罪加害者家族を描いた、非ミステリ小説です。とても作り込んだ話だなぁというのが、全体の印象でした。人との出会いで、意見で、主人公が様々な事に気づき学んで行く過程の「作り方」「演出」が、あまりに分かり易すぎると言うか行き過ぎと言うか、とにかく鼻につきました。上手くまとめ過ぎた、そんな気もします。ミステリの世界ではそのような「作り方」も面白く楽しめる作家さんですが、本作は犯罪加害者家族の生き方という重いテーマを描いているだけに、狙い過ぎの描写が内容の薄さを透かし見せてしまったように思います。

著者は、兄・剛志が犯した罪に対する社会の反応を描き、犯罪被害者家族である直貴も兄の犯した罪による「痛み」を背負っていく運命にある事を描写しています。それに対し、本書で描かれた犯罪加害者とその家族に対する犯罪被害者遺族の描写はあまりに軽く、その結果兄弟が抱える「言葉にできない」思いの描写をも薄っぺらに見せてしまうのです。犯罪被害者家族を中心に描いた本作では、被害者遺族の描写などまるで「おまけ」のような扱いでも不思議では無いのかもしれませんが、本作のエンディングに説得力を与えるためには必要不可欠な、重要なシーンであったはずです。とても残念に思いました。ミステリファンがその延長として楽しむには良いかもしれませんが、小説としては今ひとつであったと思います。

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天空の蜂

東野圭吾 著 / 講談社文庫 / 3.5 / *

あらすじ

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、原子力発電所の真上。日本国民全てを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは...。

「天空の蜂」の感想

原子力発電所に自衛隊、ヘリコプターの説明をする文章が多いせいもあり、著者の他作品とは全く雰囲気が異なっています。巨大ヘリに興味が湧かない人でも、原発に興味の無い人でも読める作品だと思いますが、逆にヘリ大好き!原発大好き!という人には物足りない作品かもしれません。クライシスサスペンスとしては、期待した程の緊迫感を味わえるわけでも無く、どこか物足りなさを感じました...。また、犯罪そのものより、犯罪者やその周りの人間の心理に深く切り込んで行こうとするような最近の著者の描き方とは逆に、犯罪そのもので人間を描こうと言うような作品という感じがしました。全てをあえて描写せず、犯行自体から、何がその人を犯罪へ駆り立て、何を憎んだかを見せようとしている…そんな作品でした。

真保裕一の作品を薄味にした感じ?などと考えながら読んでいたら、解説が真保裕一氏だったのには、ちょっと苦笑い…。

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さまよう刃

東野圭吾 著 / 角川文庫 / 4.0 / *

あらすじ

不良少年たちに蹂躙され死体となった娘の復讐のために、父は仲間の一人を殺害し逃亡する。世間の考えは賛否が大きく分かれ、警察内部でも父親に対する同情論が密かに持ち上げる。はたして犯人を裁く権利は遺族にあるのか。

「さまよう刃」の感想

辛い話でした...。良く描ききったと思うほど、難しい問題を含んだ作品でした。私は、私刑はあってはならないと考えている方なのですが、あまりに同情の余地の無い加害者の姿に、何が「正しい」のか分からなくなりました。凝った感じではなく、犯罪被害者と被害者遺族から見た少年法の無力さや行き場のない悔しさを、意外なほど正面から、素直に描いているような感じです。物語上の面白さや演出ばかりを重視していたら、もっと違った筋になるのでしょうが、リアリティを完全に無視した小説になってしまうのでしょう。罪悪感のかけらも無い本作の加害者が法律に守られ、被害者遺族は真実を知る事も復讐する事も阻まれようとする無念さが読者に訴えかけてくるのは、上手く現実感を残しながら物語を描ききった著者の上手さだと思いました。この展開だからこそ、読んでいて胸が苦しくなるのだと、思いました...。

法律は正しい、少なくとも社会の大勢の利益を守るものだとしなければ世の中が成り立たないに決まっているのだけれど、こんな加害者さえ裁けないなんて...、と思わずにはいられません。

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パラドックス13

東野圭吾 著 / 毎日新聞社 / 3.0 / *

あらすじ

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか? 13 時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある...。

「パラドックス13」の感想

東野圭吾エンターテインメントの最高傑作! などという、帯に書かれた宣伝文句を鵜呑みにして久しぶりにハードカバーで買ってしまった本作は、悲しい事に私の予想を大きく裏切る、ごくごく普通の作品でした...。あまりに大げさな宣伝文句は、裏切られた時の落胆が大きすぎるので、良くありませんね。著者のこれまでの作品を読んだ際の平均的な満足度と比べれば寧ろ、残念ながら駄作であったと言っても良いのかもしれません。そのため、この著者の作品で初めての、3.0点をつけました。エンターテイメント小説としても、パニック小説としても、SF小説としても、全く満足出来る出来ではありませんでした。崩れ行く世界に残された数名という状況においても、必死に生き延びようとする緊迫感に欠けます。残り少ない人間の死を目の前にしても、次は自分かもしれないという差し迫ったものも、重さも感じられません。新世界の新しい論理を振りかざすも、どこか中途半端...。冒頭部ではまるで物理学的に現象を解説するのかと思わせて、SFと呼ぶのも余りにも情けない肩透かし。驚きも何も無い展開と結末に、逆に驚かされるほどの平凡なストーリー...。全く人間的に魅力を感じられない主人公兄弟。でも、映画化されるんでしょうね…きっと。

パラドックス…などと銘打ってあるせいか、相対性理論を思い返してはワクワクして読み始めたのですが、本当にがっかりさせられました...。細かい事を言えば、物理的には、片方の世界が崩壊していくとしたら、もうひとつの世界でもどこかのタイミングで同じ破壊が起こるんじゃないかなぁって気がしますけどね...。なんだか、片方の世界だけが変化を繰り返して歪みを吸収! みたいな雰囲気ですけど、物理的には片方だけが繰り返し変化すると考えるのは変じゃないかしら...。読み終えてから考えてみると、このタイトルの「パラドックス」は、この現象の事を指しているのではなく、特殊状況下で社会的な善悪さえ破壊され、これまで善であると思われていた事と悪であると思われていた事から、本当にそれが善なのかどうか判断しにくい結論を人々が選択し続けなければならないストーリーそのものを指しているのかもしれません。

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名探偵の掟

東野圭吾 著 / 講談社文庫 / 4.0 / *

あらすじ

完全密室。時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた「ミステリ界の謎」。

「名探偵の掟」の感想

本格推理小説の代表的なモチーフの不自然さを、ミステリ小説書きの著者がパロディを描くようになぞりながら、軽快にユーモラスに風刺した短編集です。エンターテイメント作品として、誰が読んでも気楽に楽しめる作品になっています。「すごいけど、現実には有り得ないよね」と、本格推理の読後に呟いた事がある人は多いはずですが、それを小説家が自ら小説の中で指摘し、名探偵がこっそり溜め息をつき、羞恥に汗をかきながら「決めゼリフ」を吐く......。こんな小説、読んだ事ありません。しかし、本格推理物をネタにこれでもかとイジるこの内容を本当に楽しめるのは、本格がかなり好きで読み込んでいる人でしょう。本格好きな人は、「このネタは......」とかなりニヤニヤしながら読めます。おぉ、これはあの作品へのオマージュか! やっぱり名探偵と言えば......ねぇ!、と。

著者は本格推理物を書かなくなって久しく、犯人探しではないミステリを次々と著しています。その彼が、本格推理小説の不自然さをあげつらうようなこの作品を書く事を、例えば新本格作家さんへの揶揄である、あるいは本格推理に対する著者の絶縁状であるというような穿った視点で見てしまうと、正直悩ましいです。しかし、著者によれば「何を出しても売れなかった頃、やけくそで書いたのが本書だ。読者に一泡吹かせてやろうと思い、小説のルールはすべて無視した」という事なので、その言葉を信じて純粋に、一泡吹かされてみた方が楽しいです。本格推理を愛しているからこその作品だと、私は思います。

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名探偵の呪縛

東野圭吾 著 / 講談社文庫 / 3.5 / *

あらすじ

図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが、何かがおかしい。実はそこは、「本格推理」という概念が存在しない街だったのだ。

「名探偵の呪縛」の感想

「名探偵の掟」の続編と言ってしまうには、あまりにも違い過ぎるかもしれません。天下一という人物は共通していますが、その人物の背景も作品の内容も、雰囲気も全く異なります。単純に、前作の続編だと思って手に取ると、肩すかしを食う事になります。前作で自称名探偵を演じていた天下一は、どこにもいません。しかしここには、気づいたら名探偵天下一だった男がいます。名探偵天下一を生んだ著者の視点がある世界はどこにあるのか、前作の世界と本作の世界の関係は......と、考える程に著者の思惑を深読みしてしまいます。終盤の描写から、この天下一という人物が著者自身の一面を投影させた人物であると読者は必ず考えるはずで、そうされる事を著者は予想して描いているのでしょう。なんて、なんてあざとい事をするのだろう......。

ミステリとしては、大した作品ではありません。しかしこの内容を、敢えて探偵天下一の続編として書いた事に、「名探偵の掟」を本格推理に対する非難のように受け取った一部の方に対する、弁解じみた空気を感じてしまいます。また、本作が書かれた事で、「名探偵の掟」という類まれなる作品が、単なるジョークに墜ちてしまう事を、私は密かに危惧しています。

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<追加した書評>
【名探偵の掟 /講談社文庫】
−あらすじ−
完全密室。時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた「ミステリ界の謎」。
【名探偵の呪縛 /講談社文庫】
−あらすじ−
図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが、何かがおかしい。実はそこは、「本格推理」という概念が存在しない街だったのだ。

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