乙川優三郎

乙川優三郎

おとかわゆうざぶろう

千葉県生まれ。千葉県立国府台高校卒。その後専門学校を卒業。「薮燕」でオール読物新人賞受賞。「霧の橋」で時代小説大賞。「五年の梅」で山本周五郎賞。「生きる」で直木賞受賞。

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感想一覧

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霧の橋

乙川優三郎 著 / 講談社文庫 / 4.0 / *

あらすじ

刀を捨て、紅を扱う紅屋の主人となった惣平衛だったが、大店の陰謀、父親の仇の出現を契機に武士魂が蘇った。妻は夫が武士に戻ってしまうのではと不安を感じ、心のすれ違いに思い悩む。

「霧の橋」の感想

時代小説大賞授賞。藤沢周平を彷彿とさせる一作ですが、それを差し引いても十分に良いです。冒頭部で、一つの短篇小説としても成立していると思われるような、一つの武士の話が描かれます。これがその後の「商人、惣平衛」の背景として、そして物語の対比となるものとして、伏線として、実に効果的に働いています。なんとも上手いつくりです。

人物像も構成も、良く作りこまれた時代小説だなぁという感じですが、悪い印象は全くなく、充分に楽しめました。情感豊かでありながら、緊迫感も漂う作品です。

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喜知次

乙川優三郎 著 / 講談社文庫 / 4.0 / *

あらすじ

裕福な武家の嫡男・小太郎に愛らしい義妹ができた。一見、平穏な日々だったが、藩内には権力を巡る派閥闘争の暗雲が渦巻き、幼馴染の父親が暗殺されてしまう。

「喜知次」の感想

これは...、藤沢周平に対する挑戦であろうか、オマージュであろうか...。それくらいに「蝉しぐれ」に似ている作品です。しかし、たとえ後出しジャンケンだとしても本作は素晴らしい小説でした。私は、「蝉しぐれ」より本作の方が好きなくらいです。

ラストシーンで、心に込み上げて来るものがありました。激しい感情の描写にではなく、その静かな想いの深さが胸に響きます...。読後は余韻が心地よいです。そのシーンまでに紡がれた過去の喜び、情景の美しさ、隠されていた悲しみの全てが凝縮されていったように思える終盤は、なんとも秀逸でした。

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生きる

乙川優三郎 著 / 講談社文庫 / 4.5 / *

あらすじ

藩衰亡を防ぐため、家老から追腹を禁ぜられた又右衛門。跡取りの切腹、身内や家中の非難の中、ただひたすらに生きた12年を問う。苦境に人の心を支えるものとは?

「生きる」の感想

表題作「生きる」が直木賞受賞作。全部で三篇の小説が収められています。やはり乙川さん、目蓋が熱くなる時代物を書かせたら、天下一品です。冒頭の空と菖蒲(あやめ)の描写から、これは良さそうだな!と思わせるものがありました。乙川さんの場合、どの作品で直木賞を取ってもOKという感じがしますが、本作での受賞に文句はありません。

追い腹を禁じられ、苦渋に満ちた日々を生きる姿の描写は本当に痛々しく、読むほどに家老を恨んだものです...。ただ苦しみ増すだけの日々に、生きる価値があるのか。幸せとは何なのか。問いの答えは、多くを語らずともラストシーンの又右衛門の姿で本当に得られたように思います。全てを浄化した涙に、私も目頭が熱くなりました。

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かずら野

乙川優三郎 著 / 新潮文庫 / 4.0 / *

あらすじ

足軽の娘・菊子は、十四歳で大店に奉公に出されるが、その実、主人の妾として売られたのだった。彼女は絶望し死を覚悟するが、若旦那・富治が父を殺す場に居合わせたため、二人で出奔する破目に――。

「かずら野」の感想

親に売られ、彼自身の父親を殺した男を夫とし、裏切られても憎んでも夫に寄り添う女の姿。著者の描写の上手さによって切なさを誘われますが、どこか釈然としないものを感じてしまうのは私が現代人だからなのでしょう。

望まぬ苦しみを背負って生きるヒロインの前には、たびたびその状況から彼女を救おうとする人物が現れます。そこで彼女が選ぶ選択肢は、常に現金な私には納得の行かないものばかりなのです。弱く見える彼女の強さが、最後は読者をハッとさせるのだと思いますが...。小説としては「やはり上手いな」と感じましたが、心にはそれほど響かない作品でした。

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<追加した書評>
【かずら野 /新潮文庫】
−あらすじ−
足軽の娘・菊子は、十四歳で大店に奉公に出されるが、その実、主人の妾として売られたのだった。彼女は絶望し死を覚悟するが、若旦那・富治が父を殺す場に居合わせたため、二人で出奔する破目に――。

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